野良猫に餌をあげる前に
1.餌をやる前に本当に責任が持てるかを考える
※必ず避妊去勢手術をする(成猫であればなるべく早く、慣れていない場合でも1か月以内に罠を使ってでも捕獲する)
オス猫であっても必ず去勢手術をしてください。オスはメス以上に野良猫を増やします。(メスは年間1-3回出産します。そのメスを妊娠させているオスは、年間何頭ものメスを妊娠させています。)
成猫であればなるべく早く、慣れていない場合、慣れるまで待つのではなく、とにかく捕まえて手術をしてください。(慣れるまで待っていては、次の子が生まれてしまいます)
交通事故や他の猫との喧嘩を減らすためにも手術は必要です。
※猫のことで苦情を言われた時に「この猫は野良猫なんです」ではなく「うちの猫がすみません」と言えるかどうか考える
無責任に餌だけ与えて野良猫を増やしている人に限って、何かあると「この猫は野良猫だから」と言います。
「いつの間にか来なくなった」「猫は人に死目を見せない」これらの言葉も、餌だけ与えて野良猫を増やしている人からよく聞きます。野良猫たちは「死目を見せない」のではなく「見せられない」だけです。人目につかない場所で亡くなっていることが多いからです。(交通事故死、隠れて回復を待っていたがそのまま息絶えてしまった、など)
2.責任を持つと思える場合→1か月後には捕まえられるようにするために
※決まった時間に決まった場所で餌をやる
見かけた時に餌をあげるのでは、いつまでたってもいつ来るかわからない猫になってしまいます。
※餌やりは必ずその場に立ち会う(置きエサをしない:置きエサは最も無責任な行為です)
置きエサは、自分がいない時に餌を食べるようになってしまいますし、その他の野良猫も増やす結果になります。
※捕まえられるようになったら、できるだけ早く(♂は目安として8か月齢、♀は5~6ヵ月齢、もしくは体重2㎏超)避妊去勢手術をする
オス猫であっても必ず去勢手術をしてください。
成猫であれば、できるだけ早い手術をお勧めします。交通事故や他の猫との喧嘩を減らすためにも手術は必要です。
いつ来るのかわからないようでは、手術が遅れてしまい子どもを産むことになるため、餌やりを工夫して、必ず餌がもらえる時間を猫にわかってもらう努力をしてください。罠を仕掛けて捕まえるにしても、いつ来るのかわからないのでは、いつまでたっても捕まえられません。餌やりのルールを必ず守ってください。
3.猫の発情期・妊娠について
ネコは基本的に季節繁殖動物ではあります。(日が短くなれば発情シーズンがきて、シーズン中は妊娠しない限り延々と発情を繰り返します。日が長くなればシーズンは終わります。)しかし、家猫や野良猫は野生動物と違い、家庭の照明や街灯の関係でシーズンに関係なく発情し妊娠する子もいます。人間や犬と違って排卵日に交尾をしたら妊娠するのではなく、交尾の刺激で排卵するので、効率よく妊娠します。猫は生後6ケ月でも妊娠します。妊娠期間は2ヶ月です。(早い子は生後7~8か月で母猫になります)1回の出産で4~5匹は出産すると思ってください。
そのため、野良猫を世話すると決めたら、なるべく早く捕まえて手術をする方法を考えないといけないのです。(それが目標を1か月後に設定し、時間と場所を決めて餌やりをする理由です。慣れるか慣れないかは二の次で、触らせてくれなくても、抱っこさせてくれなくても、せめて罠で捕まえられる状態にしなくてはいけない理由の一つです。)
それ以外にも野良猫や飼い猫を家の外で面倒みる場合、完全室内飼いの猫と違って健康状態のチェックがなかなかできません。排泄物のチェック、食欲などは猫の健康状態を知るのにとても大切な情報源です。しかし、外の猫は排泄物のチェックができない場合がほとんどで、いつ来るのかわからない、他でも餌をもらっている猫の場合、食欲が落ちているのか、他でもらってきて満腹なのか、食欲の有無もチェックできなくなります。こういう場合は、治療も遅れますし、仮に気づいて治療をしようと思っても、いつ来るかわからないと投薬さえできなくなります。
保護するということは、金銭的にも時間的にも物理的にも大変な事なのです。
もしそれができないのであれば、今回来た猫は見ないふりをするという選択肢もありだと思ってください。成猫の場合、そこまで育つ環境にあったということです。「手を出さない・飼わない」という勇気も時には必要です。
無理をする、もしくは軽い気持ちで餌をやることは、かわいそうな猫1匹を助けたつもりでも、更にかわいそうな猫を何十匹も増やすことになりかねないからです。
「子猫だったけど最近大人になった」とか、「痩せていたけど餌をやるようになったら太ってきた」と言って、その猫が出産間近ということに気付かないで来院される飼い主さんも少なくありません。妊娠しても、お腹が大きくなって見た目にもわかるようになるのは、出産間近になってからです。猫の妊娠期間は2ヶ月ですが、最初の1ヶ月くらいは、お腹が目立たないので、見た目で妊娠しているかはわかりません。
不幸な猫を増やしているのは、猫嫌いな人たちではありません。
猫好きな人が不幸な猫を増やしているのです。
知識不足、間違った認識、去勢避妊をしないで外に出したり、引越しで飼えなくなって捨てて行ったり、公園に行って餌だけ置いて来たり…。
これらの行動をとる人は、みんな猫が好きではあるのです。でも不幸な猫を増やしているという自覚はありません。
ですから、猫を保護する時は、もう一歩踏み込んで考えてみてください。
間違った知識や認識不足で、不幸な猫を更に増やそうとしているのか、それともきちんと責任をもってこの子だけは助けるという気があるのか、もう一度自分自身に問いかけてから、餌を与えてください。
これらのことは、お子さんたち(時にはおじいちゃんおばあちゃんの場合もあります)にもきちんと話して伝えてください。
いつか、「野良猫」とよばれるかわいそうな猫が、いなくなる日が来ることを願って…。